前編はこちら。
英語論文はGoogle翻訳を活用
日本語の有用な情報が見つからなかった場合、英語情報にあたる。まず、調べたい食材を英語にする。
バナナ→Banana
「食材 + Health + Evidence」で検索。
本格的に調査するなら、Google Scholarから直接学術論文に当たっていくのが正攻法だが、ありふれた食材ならGoogle検索結果から探しても問題ない。
少しハードルが高いと感じたら、「Evidence based Health Benefit of ◎◎」などとタイトルにある英文のまとめサイトをGoogle翻訳にかけるととっつきやすい。
AI時代のGoogle翻訳とはいえ、まだ意味の通じない箇所や反対の意味に訳されてしまうセンテンスが出てくるのはやむを得ない。そのような場合は、不自然な日本語訳部分にマウスオーバーして原文を表示させ、訳文と比較すればたいてい主旨は読み取れる。
ブラウザアドオンの活用
Google翻訳はGoogleのサービスなので、Google Chromeブラウザ(またはVivaldi)と相性がよい。Google翻訳アドオンを使うと快適に英文サイトを巡回できる。
Firefoxのアドオンは非公式のものがいくつかあるが、「Google Translator for Firefox」が比較的使いやすいと思う。
Google Translator for Firefox – Firefox 向けアドオン
論文に登場する略語と解説
論文で頻出する数値の読み方および略語をまとめておく。
RR:Risk Ratio(リスク比)
コホート研究*1における研究対象となる疾病の発生率を比較する場合に用いられる。
解説:シンプルに特定の疾患が発症する確率を表すと考えてよい。
OR:Odds Ratio(オッズ比)
リスク比を計算できない症例対照研究*2に用いられる。
解説:すでに特定の疾患が発症した患者の過去を調べるので、調査は比較的容易だが相対リスクを計算できない。イベント発生確率が十分に低い場合は、「オッズ比≒相対リスク」と考えてよい。
HR:Hazard Ratio(ハザード比)
ある時点で起こるエンドポイントについてのリスク比を表す。
解説:イベント発症の有無だけでなく「いつ死亡したか」という時間も考慮したときには、ハザードという指標が使われる。専門家でなければ、「ハザード比:1.2」という結果は、死亡率が比較対象に対して20%高いと解釈して問題ない。
CI:Confidence Interval(信頼区間)
解説:「HR 0.85 95% CI 0.82-0.88」とは、95%の確率でHRが含まれる区間を表しており、この場合は区間が「1」より小さいのでハザードを下げる有意な結果と考えられる。
CIが「1」をまたいでしまうと、ハザードを上昇させるという逆の結果を含んでしまうことになり、有意な結果とは言えなくなる。
p:probability(結論の不確かさ)
結果が統計的に有意かどうかを示す指標。一般的にはp値が5%未満(p<0.05)をもって統計的有意と判定される。
解説:例えばHRが低下したことが、論文で主張される原因以外の影響である可能性が十分に低いことを表している。
Meta-analysis(メタアナリシス)
複数の研究を取りまとめて解析した結果。
解説:国・地域や性別・年齢の異なる研究結果が、同じ結果を証明していればかなり信頼のできる結論だと考えられる。
命に関わる健康情報はエビデンスの裏付けを
以上の予備知識があれば、専門家でなくても論文の主張する結果を大まかに把握することが可能になる。
余裕があれば全文を読み込むことが望ましいが、論文の冒頭にあるSummary(概要)とResults(結果)を重点的に理解すれば、非専門家の情報収集としては用は足りるだろう。
このように少し手間をかけることで、氾濫する健康情報の取捨選択ができるようになる。
参考:論文を読む 論文の構成 – 香川県立中央病院
http://www.chp-kagawa.jp/resident/docs/ebm-1.pdf
蛇足
日本語に堪能なネイティブが、日本人の間違えやすい英語のニュアンスを面白おかしく解説してくれる古典的名著。学校では教えてくれない英語のエッセンスが詰まっている。
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