日本社会が喫煙に寛容である理由
健康被害・他者危害の問題であるという認識がない
受動喫煙対策が社会に浸透する過程で、加害者側の喫煙者から「少しくらい我慢しろ」といった暴言が放たれている。また、非喫煙者の中にも「タバコの臭いは気にならない、気にしすぎでは?」といった発言を聞くことがある。
これは、受動喫煙により日本で年間15000人が死亡しているという統計が周知されてないことや、受動喫煙が「迷惑やマナーの問題ではなく、健康被害および他者危害の問題」であるという事実の無理解が原因である。
嗅覚の衰えにより受動喫煙被害に気づいていない
日本人が受動喫煙被害を甘く見るもうひとつの理由として、長年の能動喫煙および受動喫煙により嗅覚が衰えてしまっていることが考えられる。
喫煙者は嗅覚障害のリスクが有意に高い
実際に喫煙者の嗅覚障害のリスクは、健常者の約1.6倍である可能性が指摘されている。
尿検査により無自覚な受動喫煙被害があぶり出される
タバコ害の統計調査を行う際、「受動喫煙を受けてない」と事前アンケートに回答した非喫煙者の尿からも高濃度のタバコ由来成分が検出される事例が多いという。*1*2
つまり長年に及ぶ受動喫煙被害によって多くの日本人の嗅覚は衰えており、受動喫煙被害に気づいてすらいない人が少なくないということだ。したがって、受動喫煙による健康被害の大きさは、公表されている研究結果より深刻である可能性が高い。
なお、日本の地下街は、喫煙可能飲食店から流出するタバコの煙で汚染されている。また、屋内喫煙所のある建物は、空調を通して喫煙禁止区域にもタバコの煙が流入している。恐らく都市部で駅ビルや地下街を利用する非喫煙者の尿からもタバコ由来物質は検出されるだろう。
嗅覚は再生する
前述の研究から分かるとおり、卒煙した喫煙者の嗅覚障害リスクは高くない。
筆者は学生時代に学友から深刻な受動喫煙被害を受けていたが、近年は被害を受ける機会が少ないので、正常な嗅覚を取り戻すことができた。今なら日本の街が屋内・屋外ともにタバコの煙で広く汚染されている現状がよく分かる。
清浄な空気のもとでしばらく生活すれば、受動喫煙により衰えた嗅覚が再生し、いかに日本がタバコに汚染されているか気づくはずだ。
衰えた嗅覚が復活すると、公共交通機関では、喫煙者の体臭や泥酔者の悪臭、加齢臭、強い柔軟剤の香料が苦痛に感じられることになる。これは過敏症ではなく、人間が本来持っている五感のひとつの機能回復である。
さらに嗅覚と深く関連する味覚も鋭くなるので、薄い味付けでも素材の味を感じられるようになる。受動喫煙被害に苦しめられている人は、何とかしてタバコの煙を避けて人間本来の感覚を取り戻して欲しい。
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