アイコス(iQOS)を受け入れた日本人のメンタリティ

喫煙者のメンタリティ

加熱式タバコのマーケティング

科学的なタバコ関連記事を量産する石田雅彦さんが、アイコスに関する面白い論文を紹介していた。

内容はタバコ会社から独立した機関による市場調査で、『日本のほうがアイコスに対して抵抗感が薄く、比較するとスイスはそうではなかった』という。

その中で注目したいのが、日本とスイスのタバコに対する意識の違いである。
インタビュー調査によると、日本のユーザーは、アイコスを一貫してクリーンでシックでピュアな製品として認識し、子供の前や喫煙禁止の場所における喫煙ツールとして使用していると回答した。
対してスイスのユーザーは、アイコスの充電やクリーニングの煩雑さを指摘し、アイコスでは紙巻タバコのような自己表現や反逆・反抗をアピールするツールにならないと回答している。

タバコに寛容な日本社会

日本とスイスのアイコスに対する対照的な受け止め方は、それぞれの国の喫煙に対する寛容性の違いに起因するようだ。

確かに日本においても、中学生で喫煙を開始する喫煙者が最も多く、タバコは学生の反逆・反抗心を煽るツールとなっている側面は大いにあるだろう。

高校生の喫煙実態調査について

しかし、社会人になればそんな若気の至りは消え去り、ニコチンによる薬物中毒だけが残る。その有様は、中高年喫煙者のニコチンをむさぼるだけの喫煙所作を観察していればよく分かる。

だから日本人喫煙者*1の多くにとってアイコスは、「これなら子どもに嫌われないかもしれない」、「喫煙禁止場所でもニコチンが吸引できるかもしれない」という動機で加熱式タバコに移行したと考えられる。

「まともな人」が卒煙したヨーロッパ

アイコスが発売された2014年は、ヨーロッパ先進国ではすでにタバコ規制が進んでおり、屋内禁煙など当たり前の環境だった。

だからスイスでは、喫煙は社会悪という認識が持たれていたと考えられ、タバコは若者の「背伸びしたいという心理傾向」や「カリギュラ効果*2」を象徴するツールでしかなかった。

したがって「タバコは幼稚な自己表現ツールであり、まともな大人は手を出さない」という意識が日本より強いスイスでは、喫煙者にとって加熱式タバコのクリーンなイメージ戦略が有効に働かなかった可能性がある。

薬物中毒が浸透した日本社会の異常性

新型タバコがいかに進化しようとも、毒物であるニコチンの依存性に頼ることは変わらない。将来的なタバコ規制でタバコが闇社会に押し込められていく時、スイス的なメンタリティの国のほうが規制を受け入れやすいだろう。

筆者には、ニコチン中毒の国会議員が「喫煙は権利だ」などと発言するほどに依存性薬物が浸透してしまった日本社会のメンタリティのほうが異常に思える。

※参考:タバコ会社の未成年者へのアプローチ

*1:新しい電子機器に対応できない高齢者は除く

*2:禁止されるほどやってみたくなる心理現象

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